株式会社細尾・代表取締役社長
細尾真生さん

　伝統産業はクリエイティブ産業に生まれ変わり、日本の輸出産業になり得るか？　私の答はイエスであり、若きＣ世代がそれを実現する。コンピューターやスマートフォン、そしてタブレット端末を自在に使いこなすＣ世代には、世界の有名ブランドよりも伝統産業の方がクールである。Ｃ世代の私の長男は言う。「我々が生まれた時から、世界のブランド品は身の回りにあり、当たり前の存在となっていて、ほとんど魅力を感じない。それよりも、お父さんが仕事として取り組んでいる西陣織の方が、よほど魅力的で格好が良い」。Ｃ世代は外の目で、外国人の目で伝統産業を観て捉えている。

　Ｃ世代は伝統産業を因数分解してから関わる。歴史、伝統、文化、精神、技術、デザインなど、さまざまな観点から、それぞれの伝統産業を分解して因数として捉え、それらの因数を現代のライフスタイル、世界の国々のライフスタイルとの関係性の中で再構築し、新しい価値を創りだす。世界市場で受け入れられる「グローバル・バリュー」を創ることもできる。西陣織を40cm幅の帯として捉えるだけでは、市場は国内の呉服だけに限られる。西陣織の独自の歴史、伝統、文化、精神、技術、デザインを活用して、１ｍ50cm幅の織物にした途端に、インテリア用、ファッション用として市場が広がり、世界から注文が入ってくるのである。
　Ｃ世代はコミュニケーションが得意である。そしてネットワークをうまく作り、目標実現のためのコラボレーションを積極的に実行している。自分たちの力だけで目標を実現しようとはしない。まず、自分自身の強み・弱みを認識し、強みを生かし弱みを補うために最適のパートナーとコラボレーションをする。ＷＩＮ－ＷＩＮの関係は相乗効果を生みだし、成果を上げる。私の長男は、西陣広幅織物の世界市場への展開のために、デンマークのマーケティング会社、ＯＥＯ社とのコラボレーションを選択した。欧米のハイエンド市場を知り尽くしたＯＥＯ社によって、商品デザイン、開発、見せ方伝え方まで、徹底的に彼らの目線で作り直し、成果を上げている。まさに、サッカーの日本チームがイタリア人のザッケローニ監督を起用し、ワールドカップで善戦しているのと同じである。
　京都の伝統産業で、今、世界を目指すＣ世代の後継者が次々と現れている。伝統産業はクリエイティブ産業に生まれ変わり、日本の輸出産業になり得るか？　Ｃ世代を育て、応援し、答を「イエス」にするのである。
＊写真は、京都の伝統産業において世界を目指すＣ世代の後継者の面々

（ほそお・まさお＝本会理事、2013年２月）