株式会社 長谷本社・代表取締役会長
長谷幹雄さん

私のことを書こうと思うと、中々筆が進まない。それは当然で、自分の立つ位置をどの辺に置くのか、同友会のメンバーの私に対する視座はどの辺りに在るのかを、前もって想像してしまうからだと思う。元来私は筆まめな方で、上手い下手は別にして文を書くのは苦ではなかった。ただこの頃は年齢の所為か、書くことにあまり気が進まなくなってきた。美文を見ると本当に気が滅入ってしまう。

前置きはこのくらいにして、私は本来、組織的なことが出来る人間だと思っていた。しかし、この４年間でどうもそうでは無いらしいと言うような気がしてきた。私はサラリーマン生活をしたことがなかったので、組織というものの本質を知る大きな機会を逸した。まあ色々な組織があるが、ここでいう大会社の様な組織をよく理解していなかった訳である。組織はそもそも個人の集まりであるけれども、それが組織と言うものに組み込まれてしまうと、どうも別の、変なものに変わるようだ。大会社も、大学も国も、皆大組織で、一旦おかしい方向に動き出すと個人は否定されて、烏合の衆となるのは簡単な様な気がする。だから私はできる限り小さな集団で行動するのが良いと思うし、また私の分としては合っているのかもしれない。小さい集団、例えば中小企業のようなものであれば、社長一人の強い個性でどうにでもなるし、また面白い事が出来るのは当然のことと思う。面白い個人の集まりであれば組織はより強くなるし、そして継続もする。私がもし組織的な人間でないとするなら、これからもっと面白い事が出来そうな気がする訳で、事実そうなるかもしれない。ただ、そこで大切なことは、その中に何でもいいから創造性が見えるかどうか、まったく新しい考え方が出来るかどうかという事だ。私の考えているような事がもう既に考え出されていることは自明の理で、私にそのような才能がないことと同じである。

私の好きな分野に建築がある。全く新しい建築を生み出すのは現代では不可能に近い。それはコンピューターによって計算し尽くされた可能性の延長線上にあるものでしかないようだ。著名な現代の建築家でも、ほとんどはイミテーションの世界にあると言って良いし、彼等も金儲けもしなければならないのだから、寄せ集めに頼るのは当然かもしれない。建築に限らず多くの分野において、創造的なものはその時代には受け入れてもらえない場合が多い様だ。物まねの世界の方が世間に受け入れて貰い易いし、安心感もある。ただし、色々な局面で創造は必ず起こっている。創造者は天才か神になってしまうのも事実だと思うし、起こればほとんど奇跡に近いと思う。

私は今、自然を出来る限り原始に近い形に戻すことが出来ればと考えている。100年か200年かかかると思うが、人類が全く立ち入らない地域を作りたい。これは、全世界で見れば既に多くの例があるはずだ。創造ではなく、これもやはり物まねの世界でしかない。しかし私にとってはやるのかやらないのかであって、迷うならGoである。You stay , I go. である。その結果私は何処へ行くのでしょうか？

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （はせ・みきお＝本会代表幹事、２０１５年４月）