株式会社 ナベル　代表取締役
南部邦男さん

物価の優等生「たまご」の９割以上が外国製品であるのをご存じだろうか？私達は外国から連れて来られた親鶏夫婦が産出する雌鶏（採卵鶏という）から産まれた「たまご」を食べているのである。この雌鳥は生物学的には一代雑種と言い日本の養鶏農家は毎回その特別な産卵性能を持った一代雑種の採卵鶏を買わなければ効率的に「たまご」を生産することができないことになっている。ブロイラーも同じである（採卵鶏に対して食肉鶏と呼ぶ）。業界ではこれら家畜のことを「産業動物」と呼んでいる、聞きなれない言葉であるが言い得て妙である。このような事情だから「たまご」を物価の優等生と言う時のいささか誇らしい空気の舞台裏は外国鶏種が支えているのである。

「たまご」に限らず私達が日常購入するもので諸外国からの輸入に全く頼らない製品がどれ程あるのか怪しいものである、原油、鉄鉱石、銅鉱石、希少金属・・・・これらは全て輸入品。親鶏が輸入であるという理屈で言うと電力もそうである、水力発電所への依存率が半分以下になった1960年代半ば以降、火力と、原子力でその大半を賄う電気も外国製品と言うことができる。今の世界はこのようにお互いの地域の得意な産品を融通しあいながら成り立っていると言うのが実態であろう。時には強引に軍隊を繰り出して国家まで作ってそこから自国に産品を供給させると言う事まで成される、原油の争奪の為や、運河の確保の為に悲しい戦争が起こることもある。かつて我が国も原油の供給を制限されたことで戦争を行い、夥しい戦死者を出し降伏した経験もある。 

今年は敗戦後７０年である。ずいぶんとグローバルな時代だと言う、グローバルであれグローカルであれ経済の成りたちは得意な産品の交換であって多くの人々の欲しがるものは高い価値で他の物と交換ができる。従来に無い製品、他国では真似が出来ない製品やサービスの開発こそ産業人の使命であろう。かつて我が国には「産業報国」の標語があふれていた時代があったがその時代の悲しい思い出と共にこの標語は汚れてしまった。しかし国の存続をかけて多くの研究者が世界に誇る研究、開発を行い成果をだしたことを忘れないでいたいと思う、本多光太郎、豊田佐吉、御木本幸吉、鈴木梅太郎、野口英世、八木秀次、島津源蔵、、、、、。最近の産業人も負けてはいない、「マグロの完全養殖」、「ハイブリッド車」、そして直近の快挙は「燃料電池車ミライ」であろう。 

経済が世界規模で動かざるを得ない今こそ我々は「産業報国」が我が国の平和と繁栄への最善最強の道であることを改めて思いだしたいと思う。70年を経た今、あの戦争で亡くなった多くの先人に思いを馳せながら今年も仕事に取り組みたいものである。　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（なんぶ・くにお＝本会幹事、２０１５年１月）