株式会社ビジネスプラスサポート 代表取締役
藤井美保代さん

旅の醍醐味は、異文化に触れることで価値観がガラリと変わったり、人生の骨格となるような世界観に出会えることです。また、いつもと違う環境に身を置くことで、インスパイアされることも多々あるため、定期的に旅に出ます。

今年は、北欧４か国を周遊。どの国に行っても「自然と共生しながら暮らしている」感を受けました。フィヨルドの村や、地方都市はもちろんのこと、オスロやストックホルムのような各国の首都でも、街の至るところに木々が茂り、花が咲き乱れ、ベンチで思い思いに時間を過ごす人々がいます。

自然は心を豊かにするのでしょうか、または、豊かな人生を紡いでいるからでしょうか。人々からギスギス感はまったく感じられません。とにかく親切、お店でじっくり接客いただにもかかわらず、気に入ったものがなく何も買わなかったとしても、まったく気分を害した様子もなく、気持ちよく送り出して下さいます。ストックホルムでは、ホテルまでの道順を訊いた時、「ごめんなさい、わからない」とおっしゃった女性が、5分後、地図を片手に追いかけてきて、目的地までわざわざ先導くださいました。

また、過度のCS（顧客満足）は追求しません。日曜はショップやレストランがお休みのところも多く、ホテルのフロントに24時間人はいません。行き過ぎた顧客主義ではなく、ある種の割り切りも感じられ、その仕組みやシステムを、顧客側も受け入れています。

「人を動かすと対価が発生する」ということも徹底されています。例えば、トラムやバスの切符を券売機で買うのと、車内で運転士さんから買うのとでは、ずいぶん金額が違います。とてもフェアですし、理にかなっているなあ、と思うこともたくさんありました。

ストックホルムでHR企業の視察に行った際、CEOと人事マネージャーに「そもそも、スウェーデンの人たちにとって、働くとはどういうことなのか」、「労働生産性と幸福度を両立するには？」「ジェンダーバイアスは存在しないのか？」。こんなことを2時間じっくりと聞かせていただきました。曰く、幸福度と労働生産性を両立する第一歩は、「とにかく休むこと」。休むことで、クリエイティビティが発揮される（自然との対話・違ったコミュニティで触発される）。一方において、働く時間の質を上げることだ。そのためには集中力を発揮し、メリハリをつけることが大事だと。対話の中で何度も出てきた、“アルベーツ・グレージェ（働く喜び）”という言葉が印象に残りました。“仕事は生活のためだけではなく、自身のアイデンティティそのもの”。働くことが働きがいになっているような印象すら受けたお話でした。