京都青果合同株式会社 取締役名誉会長
内田　昌一さん

カンボジアでは長い内戦で、多くの若い人が亡くなった。長い内戦のためか、復興が遅々として進んでいない。そのような状況の中で、日本からはいろいろな団体が恵まれない子ども達の支援を行っている。

　私達もその一つである。元々、フランスのエビアンの日本法人社長であったマルセル氏が支援に乗りだし、多くの子ども達を養子にして育てたり、学校を経営しているのを、マルセル氏の友人で東京の山野エミール氏が長年協力しておられた。私と山野氏とは、フロリダのグレープフルーツの販売促進のために協力していた関係で親しかったので、お話を聞き、それではということで2006年（平成18年）暮れに、山野氏のお供をしてカンボジアへ行った。私達が訪れたシェムリアップの学校には、当時、小中学生を中心に、約200名の子ども達がいた。

　その時の印象は、行儀は正しいが、貧素な身なりで靴もなく、食べれればよいといった姿であった。持って行ったボールペンを一本ずつ手渡しした（そこのオーナーが一人ずつに手渡してやってくれとのことだったので）。

　そのようなことをしている時、ふと第二次世界大戦の敗戦の時を思い出した。

　当時、私は中学二年生だったが、街中では、ギブミーチョコレートと言ってアメリカ軍のジープを追いかけている姿をよく見かけた。そして、大変ひもじい思いもしたし、紙・鉛筆等何も無かった。それでも、私達は頑張ろうという気持ちを奮い立たせたことを思い出した。カンボジアのあの貧しい子ども達の目の輝きを見ていると、私達の当時のことがオーバーラップしていた。

　これらの恵まれない子ども達が青年になった時、カンボジアは素晴らしい国になるだろうなぁと思い、支援を続けようと心に決めた。

　その後、毎年一回は行っている。今年２月で6回訪問したことになる。その間、孫（今は大学生）も連れて行ったが、彼は大変ショックを受けたようだった。また、知人の小児科の先生に同行してもらって、子ども達の健康診断をしてもらった。

　今年訪問した時、私達の目線が高いところにあり、本当は目線をもっと低くしての協力が必要だと気がついた。幸い、今年は京都南ロータリークラブが中心となり、ロータリークラブの皆さんの協力により、初めて立派なトイレが学校に完成した。

　この学校は、世界遺産になったアンコールワットとアンコールトムの間に位置している。私は知人に、是非ともアンコールワットとアンコールトムを観光して下さい、そして私達が支援しているバイヨンスクールを見てやって下さい、そして、できれば支援してやって下さいと言っている。

　私は今、会社では名誉会長という肩書をもらい、自由にさせてもらっているので、ボランティア活動に余生を楽しんでいる。

（うちだ・まさかず＝本会特別幹事、2012年５月公開）