京都中央信用金庫　副理事長
平林幸子さん

                                                                                     写真＝向井潤吉「山家早春」

　生まれ故郷や応援したい自治体に寄付すると所得税や個人住民税が減額される「ふるさと納税」の人気が高まっている。これは小泉内閣の三位一体改革で地方交付税の削減等によって都市と地方の税収格差が広がり地方の不満が強まったことに配慮して導入されたもの。当初は伸び悩んだが、寄付の御礼に特産品を送る自治体が増えたことから近年利用者が増えてきた。

 

ふるさと納税は、所得などに応じた上限額の範囲内なら何回でも寄付することができ、２，０００円を超える全額が居住地の住民税等から控除される。例えば、Ｓ市に２０，０００円を寄付すると１８，０００円の税金が控除され、５，０００円の特産品が送られると寄付者は実質３，０００円得することになり、自治体には１５，０００円の寄付が入る。

特産品は米や肉、果物や魚介等の食料品から宿泊券や一日町長体験まで工夫がこらされている。特産品を比較するサイトやノウハウ本も出ていささか過熱気味ではあるが、政府は地方活性化の目玉に位置づけて制度の拡充や手続きの簡便化を来年度から実施する方針である。

　ものは試しと、私も今年ふるさと納税をやってみた。自治体とはパソコンでのやりとりで手続きは至って簡単。振込みが確認されれば、特産品が次々送られてくる。正直、特産品目当てに選んだ自治体は行ったこともなければ名前すら知らなかったところの方が多い。確かに産地直送の梨やりんごは新鮮でおいしいし、多種多彩な特産品は日本の食文化の豊かさを感じさせる。

それもさることながら、私をとらえたのは、同封された首長からの礼状や自治体の広報誌。そこから見えてくるのは、豊かな自然や歴史と伝統に恵まれてはいるものの、切実な少子高齢化の実情や地方経済の疲弊である。「寄付は地域住民の福祉向上の重要な財源として効果的に使いたい」という文面には実感がこもり心を打たれる。以来、何気なく見ていたテレビに寄付した自治体が出てくると急に親近感を感じて一度は訪ねてみたいなどと思い、続けて応援しようという気持ちになる。特産品は地元の「道の駅」や授産施設で作られているケースが多く、激励気分になって同封されてきた注文書で無添加食材を頼んでみたりもした。これまで無縁であった遠くの町や村が急に身近なものになっていった。

 

人口減少と地方活性化はわが国が直面する喫緊の課題ではあるが、都市部にいるとなかなか実感することは難しい。ふるさと納税は思いのほかの収穫をもたらしてくれる。

       　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（ひらばやし・さちこ＝本会幹事、２０１４年１２月）