株式会社長尾組 常務取締役
長尾篤人さん

現在、私たち世代でも一般的には使われなくなりつつある尺貫法。とは言うものの、一寸の虫にも五分の魂、一尺八寸の長さの尺八、京都の多くの町家は間口二間などなど、今でも生活の中にも残っている馴染みのある単位でもあります。

その尺貫法でいうところの“里”はどれくらいの距離を表すのでしょうか？昔の街道沿いに目印として設置された一里塚。これはメートル法でいうところの約3.927kmごとに設置されていたようです。では、五里五里の里とは？

それは、京都府南部の城陽市。

かつては、奈良と京都のちょうど五里と五里の中間に位置したことから五里五里の里と呼ばれたようです。城陽という町はご存知の通り、約8万人の人口を抱え、京都サンガの練習場かあるホームタウンとして有名でありますし、またイチジクや青谷の梅、金銀糸などの産地でもあります。

また城陽には、当社の営業所も存在しますが、昭和30年台後半から大阪万博や名神高速道路の建設、高度成長期の建設ラッシュを経て、約半世紀にかけて、京都はもとより大阪や奈良に供給を続けてきました優良な骨材の一大生産地でもあります。

ちなみに骨材とは、コンクリートの原材料となる砂や砂利のことをいい、城陽市東部丘陵地は古くより木津川流域でもあることから天然の良質な原石が産出されております。社会インフラとして必要な材料供給を続けるための開発を長年進めてきた一方、近年は緑地の減少や運搬車両による環境への負荷など負の面も問題とされてきました。

そして今、このエリアに新たな一筋の光が射す計画が進められようとしています。

それは、大津－城陽間の新名神高速道路の建設に伴い、大型アウトレットモールとスマートインターチェンジの建設計画です。この交通インフラの整備に伴い、関空や神戸、セントレア空港とも時間距離的には1時間強圏内で繋がることになり、巨大化する商圏によりアウトレットモールは西日本最大級規模が計画されるようです。また、将来的には宿泊施設や物流、防災拠点などの整備が進められ、もしかしたらIR法による統合型リゾートが誘致されるかも知れません。そうなるとリニアモーターカーの名古屋－新大阪間の中間駅として長池駅が急浮上する可能性も！ホテルも京都らしくCLT工法を用いた木造5階建ての建物にすれば、伐採期を迎えた京都府北部の林業振興にも一役果たせるのではないでしょうか。

五里五里の里は、古の京都－奈良間の南北だけでなく、近い将来は東西の新国土軸とも重なり、関西のヘソとして重要な拠点であり続けることでしょう。昨今のインバウンド需要は京都市内に偏っておりますが、今後は府南部エリアの活性化への起爆剤として、山砂利採取地跡が夢のあるエリアへと発展することを心待ちにしたいと思います。