株式会社くろちく　代表取締役社長
黒竹　節人さん

 

　ぎおん囃子が宵の町を奏でる季節がやってまいりました。囃子方にも若いエネルギーが加わったようです。南観音山のお囃子は３９曲もあるようです。囃子方は現在５８名で、毎月１回の練習会があり、吉符入りとともに町会での二階囃子がはじまります。お囃子にはじめてのチャレンジするのは１０歳前後が多く、一歩づつ確実にマスターする、まさに五感で磨くわざといえましょう。
　毎年、決まった手順で儀式が執り行われ、決まった技術で山を立て、祭りが遂行されます。所作や作法もしっかりと継承され、毎年毎年、１年かけての口伝て心伝てです。

　私たちの暮らしは、美しい四季の移ろいとさまざまな年中行事で彩られています。幼い時より、暑い寒いと同時に、季節の草花を愛で、旬の味覚に舌鼓を打つ、そして祭囃子や季節ごとの行事にこころ躍らせてまいりました。伝統文化や季節感を大切にし、行事を通じて日本のこころを養って来たのです。
　自然に親しみ、季節を愉しむ。季節とともにめぐる歳時記は、日々の暮らしを豊かにする大切なツールです。

　私がなりわいの中心に据えている和雑貨は、日本の工芸や伝統の工芸文化を背景に存続するもので、それは四季の営みと日本人の暮らし、伝え継がれた季節の歳時記に育まれ成長発展してきました。かつて世界が高く評してきた日本の伝統芸能や工芸の技、その意匠の美しさはそこから生まれました。
　この儀式や行事、習わしなどは、戦後の近代化や核家族化、生活の洋式化などに伴い、年を追うごとにしだいに廃れ縮小しており、つれて京都の宝である伝統工芸や伝統芸能の存立基盤は困難さを増しています。

　日本のゆたかな四季に培われた伝統的な儀式や行事、習わしは、工芸復興のみならず、日本特有の高度な美意識、日本人としてのアイデンティティに通じるものであり、薄れつつある地域や社会とのつながり、世代間のコミュニケーションの手段として、また日本と世界をつなぐ「心のパスポート」として、大いに活用できるものであります。

　国により１１月１日が「古典の日」として法制化され、また、清酒の普及をめざす京都市条例が制定施行された今日、見失われつつある和の文化を見直し、日本人としてのあるべき振る舞いや行動を再確認するきっかけとし、日本のすばらしい技と美をしっかりと受け継ごうではありませんか。
　数年前から日本のこころとわざの検定事業として「にっぽん検定」を考えてまいりましたが、昨年、“いつでもどこでも”をキャッチフレーズに「にっぽん検定・グループ講座＆検定」をスタートさせることが出来ました。３級＝日本の歳時記、２級＝儀式と作法です。ＷＥＢでも京都国際工芸センタのＨＰで「にっぽんの常識」のウイークリー講座と模擬検定を行っています。いちどお試しください。

＊写真は２０１２年山鉾巡行 ＜くじ改め（筆者）＞

（くろたけ・さだと＝本会理事、2013年７月）