株式会社 藤井組 代表取締役
藤井和樹さん

「モノより思い出」
昔、そういう車のCMがあった。素敵な作品だ。
青年政策研究部会（以下、青政研）で出会った先輩に、まるでこのCMのモデルのような方がいらっしゃった。ご家族やご友人へのプレゼントにブランド品などの「モノ」ではなく、旅行など思い出づくりの機会を贈っていらっしゃるそうだ。カッコいい先輩だ。

「モノに思い出を」と、別の先輩からも教わった。仕事がうまくいったとき、記念に「モノ」を買うそうだ。時にその「モノ」は、良いことが起こった社員や友人に記念エピソードを添えて贈られる。こちらの先輩も実にカッコいい。

このように書くと青政研は「カッコいい人の集まり」のように思える。が、必ずしもそうでない。しかし、少なくとも「自分を研くためのヒント」は転がっている。ゴロゴロと。

ゴロっと1年前に遡る。

2014年10月23日、祇園。当時、青政研部会長であった戸谷さんからお誘いを受け、二人で食事をした。日本酒で乾杯し、美味しいお料理と、私を次期部会長に指名するお話を頂いた。
身に余る光栄。そして、身を襲うプレッシャー。二次元の世界へと押し潰されそうだ。しかし、このような機会は望んで得られるものではない。30代最後の良き思い出になると捉えた私は、部会長の受託と、自分を勇気づけるため「青政研らしいモノ」を手にしようと決意した。

ジュニア部会から数え、50年を超える歴史あるこの会に似ているモノはないだろうか。
正統なスタイルで世界に真っ向勝負を挑んでいるモノはないだろうか。

ひと月ほど探した結果、ある時計に辿り着いた。1960年に初めて発売された国産の時計だ。直ぐに初代モデルを探し、川崎市で見つけた。

50年以上、人から人へ受け継げられた古めかしい時計。この間、手にした者が大切に取り扱ったからこそ、今、私の手元にある。現在、このブランドのいくつもの新商品が世界に挑んでいる。何れにもどこか初代の面影を感じるこの姿。

まるで、青政研。

眺めていると、この時計のように、青政研も、会の品位を守りつつ、その時自分たちが必要だと考えたことを精一杯行えば良いのだ、と思えてくる。

手巻き式なので、時計をするたびにリューズを巻く。青政研らしさを考える儀式。面倒だが、とても気に入っている。でも、それも残すところ、あと1年半のつきあい。私も青政研を卒業し、この時計も私を卒業する。

20年後、この時計は何処にあるのだろうか。ささやかな還暦の楽しみである