株式会社KOYO熱錬 代表取締役社長
杉本卓也さん

自動車や航空機など、あらゆる機械に使われる金属部品の熱処理加工を行っています。金属は硬いと思われていますが、そんなに硬いものではなく、削ったり、叩いたりすることで様々な形に変えることができる便利な材料です。金属部品はそのまま使用される訳ではなく、熱処理によって、強かったり、バネのように元に戻ったり、様々な特性を得て使われるのです。 

熱処理も刀鍛冶の時代と違って、今は全自動でプログラムされた世界ですが、新しい部品の条件設定など、やはり人の技能が大切になります。また、重い金属を運んだりする作業は必須で、少子高齢化の限られた人材で仕事を続けるため、作業支援ロボットの導入なども検討しています。 

この流れは家庭でも同じで、昨年、我が家に芝刈りロボットが仲間入りしました。自宅の庭に僅かながら芝を育成しているのですが、真夏にはぐんぐん伸びて、刈った芝は毎週90Lの袋がいっぱいになるほどです。生き生きとした芝の上で作業することは、なんとも気持ちがいいものです。一方、炎天下で毎週、作業を行うのは大変で、芝は元気でも人間の方がくたびれてしまいます。そこで、ロボットに仲間になってもらいました。 

この北欧製のロボット、とても静かで夜に作業をしていてもほとんど音が聞こえません。また、GPSも搭載しているため、仕事が終わったらちゃんと充電器に帰ります。これで上手くいけば夢のロボット、本当に大助かり！と思っていました。 

でも使用して一年以上たった頃、なんだか芝の伸びが悪く、雑草が生えやすくなるという面も出てきました。何故かと言うと、ロボットは芝は刈ってくれますが、掃除をしてくれないので、芝の刈りカスがたまって、芝の育成を阻害するようです。現時点では、人間は楽できても、ロボット任せで元気な芝を維持するというところまでには至っていないようです。 

米国製の掃除ロボットを使ったときも同じことを思いました。隅々まで綺麗にしてくれるけど、家具にガンガンぶつかるので、家具がかわいそうと思ったからです。最近では、物体との衝突前にセンサーが検知するなど、日本の知恵が入った掃除ロボットが開発され当社ではそちらも活躍しています。 

今後、産業の更なる発展を考えると、ロボットの導入は必須であると思います。ロボットの多くは海外で発明されていますが、これらを使いやすいものにする技術開発には、自然と調和して暮らしてきた日本人の細やかな知恵や感性が必要になるのではないでしょうか。これからも産業の発展のために目立たないながらも下支えしていければと思います。